| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-220

戦いの勝ち癖負け癖:経験から自己を評価する集団のゲーム

*萱島隆一(九大・理),上原隆司(九大・理),巌佐庸(九大・理)

動物の世界では闘争能力や資源の価値の影響だけでなく、過去の戦いの結果がそれ以降の闘争の結果に影響を与えるということが起こる。勝者は次の戦いがたとえ違う相手だとしても勝ちやすくなり、敗者は負けやすくなる。これはwinner and loser effect(勝ち癖と負け癖)として知られている。このwinner and loser effectが適応的だと説明する仮説の一つに、self-assessment仮説がある(Whitehouse 1997)。この仮説は勝者や敗者は戦った際に、自身の闘争能力について情報を得ているという仮説である。本研究ではこのself-assessment仮説に焦点をあてる。ベイズ推定を用いて自身を評価する集団をモデルにし、ゲーム理論によってwinner and loser effectの仕組みを調べた。

結果として、自身を評価する個体の集団の方が、評価を行わない集団に比べて、弱い個体ではより高い勝率、強い個体ではより低い勝率を示すことがわかった。また、自身の対戦の結果をどのように評価する戦略が進化するのか調べた。その結果、闘争に負けることによるコストや闘争に勝つために必要なコストが大きいときには自身を慎重に評価する戦略がESSとなり、それらのコストが小さいときには自身を楽観的に評価する戦略がESSとなることがわかった。

日本生態学会