| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-225

府大池(大阪府堺市)におけるアブラコウモリの活動の季節変化

*林 義雄(大阪府立大・院理), 谷田一三(大阪府立大・院理)

大阪府立大学中百舌鳥キャンパス内にある府大池(正式名:園池)の一角に,低価格のコウモリ探知機を設置し,出力をICレコーダーに記録した.調査は,2007年4月27日より開始し,年内最後にコウモリの声が検出されたのは11月30日であった.記録は,音響解析ソフトで分割し,5分ごとに1分間の記録を解析した.コウモリの声が確認された割合を,1時間ごとに集計して検出率とした.また,1分あたりに確認された採餌音の回数も指標とした.初認時刻は,日没時刻と同調するように変化する部分もあったが,7月下旬から8月初旬まで,日没時刻より1〜2時間早く出現する個体が確認された.また,目視により,早い時間に出現する個体が複数いることも確認された.これらの個体は,気温と屋内温度の関係から,高温ストレスによりねぐらを放棄した個体であると推察した.調査期間中,初認時刻のほとんどは,日没時刻前であった.検出率は,春と秋の寒い時期には,日没後の数時間に限られたが,夏季には4時台まで高かった.採餌音は日没後に最も多く,夏季には日の出前にも多くなったが,このパターンにはバラツキもあった.府大池上で採集される飛翔昆虫のほとんどはユスリカであり,日没後に最も多く,日の出前にも,やや多くなった.府大池にて,飛翔中のコウモリより落下した糞(n=1)の内容物としては,ユスリカの複眼,脚,触角などが多く,蚊の触角や鱗粉なども認められた.鱗翅目の鱗粉が極めて多数確認されたが,鱗粉以外の部位が少ないことから,捕食数はユスリカの方が多いと考えられた.初認コウモリの飛来方向を追跡したところキャンパス外から飛来するものが多く,キャンパス内からの出巣は確認されなかった.キャンパス内に飛来するコウモリの一部は,府大池から300mほど離れた木造瓦屋根の民家から飛来すると考えられた.

日本生態学会