| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-227

葉を巻けば撒(ま)ける寄生蜂・巻いても撒(ま)けない寄生蜂〜オトシブミ科における“葉巻”の進化〜

*小林知里,奥山雄大,川添和英,加藤真(京大・院・人環)

オトシブミ科は、生きた植物に産卵する際に、産卵部に対し母親が茎を切ったり葉を巻いたりという様々な加工を行う特徴があり、孵化した幼虫は加工された植物内部のみを食べて成虫になる。即ち、加工された植物体は幼虫期の餌であると同時に隠れ家の役割も果たす。オトシブミ科の様々な植物加工の中でも、特に葉巻き行動は一連の複雑な行動と長い労働時間を必要とする。それにも関わらず、オトシブミ科では何度も独立に葉巻き行動が起源したことが分子系統樹の結果から支持されている。こうした葉巻きは寄生者の攻撃を回避するために進化したのではないかという仮説の下、オトシブミ科19種の卵期から幼虫期における寄生者群集を調べ、植物加工の異なる種間で比較を行った。その結果、葉巻きを作る種はコマユバチ科やヒメバチ科の寄生を受けるようになるものの、ヒメコバチ科による幼虫寄生やホソハネコバチ科による卵寄生を回避できていることがわかった。葉を巻くだけではなく葉巻きの密閉も行うチョッキリ亜科の種では、タマゴコバチ科による卵寄生も回避できており、寄生率は非常に低く抑えられていた。オトシブミ亜科では複雑に折り畳まれ密閉された葉巻きを作るにも関わらず、特殊化したタマゴコバチ科Poropoea属の卵寄生蜂による寄生を受けていた。以上の結果はオトシブミ科における葉巻きの進化が寄生蜂との強い関わりの中で起こったことを示唆する結果であり、特にオトシブミ亜科ではPoropoea属との軍拡競走によって複雑な葉巻きが進化したことが示唆された。

日本生態学会