| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-230

異なる誘引器によって捕獲されたキクイムシ類

衣浦晴生(森林総研関西)

これまで森林の昆虫相調査で様々な誘引器が使用されており、そのなかで吊り下げ型誘引器は、設置の簡便さから比較的多く使われている。また、カシノナガキクイムシが、Raffaelea quercivora(通称、ナラ菌)を媒介することによって発生するナラ類の集団枯死(ブナ科樹木萎凋病)は、近年その被害地が拡大しており、これまでカシノナガキクイムシを捕獲するために、集団枯死被害地で市販の昆虫誘引器を用いた誘引試験が行われている。これまで主に使用されてきた誘引器は、マツノマダラカミキリ用の黒色型(サンケイ化学社製;以下、B型)とFunnel trap (Phero Tech社製;以下、F型)であるが、前者はマツノマダラカミキリ用であり、後者は樹皮下キクイムシ類用のトラップである。そこで吊り下げ型の衝突面積を長くしたタイプ(L型)、無色透明にしたタイプ(C型)の2種類を新たに作製し、前述の2種とともに4種類の異なる誘引器を使用して捕獲試験を行った。試験地は滋賀県高島市朽木で、誘引剤としてカシノナガキクイムシの集合フェロモンを使用した試験地において、行動特性の解析のためにコントロール区の捕獲結果を使用し、2007年6月12日から6週間、毎週回収を行った。

その結果、誘引器にはカシノナガキクイムシ以外のキクイムシ類も多数捕獲され、最多捕獲数はXyleborus sp.で、次がカシノナガキクイムシであった。全体として、F・L型が、C・B型よりも多くのキクイムシ類を捕獲したことから、基本的には衝突面積が重要と考えられたが、種によってF型に捕獲されやすい種とL型に捕獲されやすい種に分かれた。また調査地によっても捕獲されやすいタイプが異なる種があった。

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