| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-232

イタチハギマメゾウムシにおける休眠のコスト:世代間に見られる生活史形質の可塑性

*定清奨(大阪府大院・理), 人見奈緒子(大阪女子・理), 石原道博(大阪府大院・理)

温帯に生息する多化性の昆虫には、休眠せずに成長し繁殖を行う非休眠世代と休眠に入り越冬し翌年に繁殖する休眠世代がある。このような世代による違いは環境条件の違いによって生じる表現型可塑性である。休眠世代は休眠の維持にエネルギーを消費するため、非休眠世代と比べるとコストがかると考えられる。そこでイタチハギマメゾウムシを用いて、休眠世代と非休眠世代の生活史形質を比較することにより、休眠コストの検出を行った。

香川県楠見池で越冬世代を採集し、そのF2世代を卵から休眠処理(10L:14D, 22℃)と非休眠処理(16L:8D, 22℃)の2つに分けて飼育した。休眠処理個体は100日後に長日処理(16L:8D, 22℃)と低温処理(10L:14D, 5℃)のいずれか一方で、休眠を覚醒させた。低温処理個体は低温処理を40日間行った後、最初の休眠処理条件に戻した。羽化した個体はそれぞれの処理内でペアにし、処理間で生活史形質を比較した。

その結果、非休眠個体に比べて、休眠個体は産卵数と体サイズが有意に減少した。しかし、寿命と産卵前期間には有意な差はみられなかった。どちらの処理でもメスの体サイズが大きくなるほど、産卵数が増加した。また非休眠個体ではオスの体サイズが大きくなることでも、メスの産卵数が増加していた。この結果はオスが精子とともに栄養物をメスに渡している可能性を示唆する。しかし、休眠個体にはそのような傾向は見られなかった。以上の結果は、雄雌ともに休眠の維持にエネルギーを消費したことが、休眠後の繁殖へのコストとなっていることを示すものである。

日本生態学会