| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-236

両側回遊性ボウズハゼの生活史ー流下と加入

*飯田碧,渡邊俊,塚本勝巳(東大海洋研)

主に熱帯に分布するボウズハゼ亜科の魚類は、すべて再生産とは無関係に川と海とを行き来する両側回遊魚である。しかし温帯のボウズハゼの生活史に関する知見は少なく、中でも回遊・移動を扱った研究はほとんど無い。本研究では、本種の両側回遊性の生活史において重要な、河川と海の間の移動に着目し、孵化仔魚の流下と仔魚の海から川への加入を明らかにする。

2004年、2005年、2007年の7月から10月までの産卵期に、和歌山県太田川の河口から上流2kmの地点でリングネットによる流下仔魚の採集を行った。流下仔魚が採集されたのは、2004年8月2日から9月13日(ピークは8月2日と8月14日)、2005年7月24日から9月13日(8月20日)、また2007年は7月24日から9月20日(7月31日と8月28日)であった。計4回の24時間調査から、孵化仔魚は主に夜間に流下し、そのピークは21時であることがわかった。2006年4月から8月と2007年3月から9月までの期間、太田川河口域に小型定置網を設置し、海から加入する仔魚の採集を行った。仔魚が採集されたのは2006年4月18日から8月26日まで、2007年4月13日から8月11日までで、加入時期は春から夏にかけての4ヶ月間であった。仔魚の採集個体数は2006年は12,766個体、2007年は372個体と両年で大きな差があった。加入時の仔魚の体長は平均26mmで、両年を通じほぼ一定サイズで加入するものと考えられた。

熱帯に生息するボウズハゼ亜科の流下と加入期間が、8ヶ月から周年と長いのに対し、温帯に分布するボウズハゼのそれらは短かかった。この短い流下と加入の期間は、河川における成魚の生活史を反映し、本種が温帯へ適応した結果と推察した。

日本生態学会