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一般講演(ポスター発表) P3-238
母親から子への資源の投資量は、環境条件に依存して可塑的に変化することがさまざまな分類群で知られている(Fox and Czesack 2000)。また、母親から子への資源の投資量の減少は、一般に子の適応度成分を減少させる。しかし、大型卵から生まれた子に比べ小型卵から生まれた子は、可塑的に反応することにより適応度成分の減少を小さくしていると考えられ、その反応の仕方には種間変異があることが知られている。
アズキゾウムシの室内集団と野外集団を低密度条件と高密度条件で生育させると、低密度で成長させた雌は体サイズが大きく(大母親)大型卵を産むが、高密度条件で成長させた雌は体サイズが小さく(小母親)小型卵を産んだ。そして、野外集団の小型卵から生まれた娘は、大型卵から生まれた娘よりも発育期間が長くなったが、体サイズに違いがなかった。室内集団の小型卵から生まれた娘は、大型卵から生まれた娘に比べ、発育期間が長くなり体サイズも小さくなった。従って、母親の子への異なる資源の投資量に対する子の反応に、種間変異の基礎となる可能性がある系統間変異が検出された。
しかし、室内系統と野外系統間に母親から子への資源の投資量に変異があるため、子の適応度成分の違いを系統間で統計的に比較することができなかった。そこで、近交系を低密度条件と高密度条件で成育させ大母親と小母親を作り、室内系統と野外系統の父親と交配させた。父親からは遺伝子のみ伝えられるので、母親から子への資源の投資量は低密度条件と高密度条件ともに、室内系統と野外系統間で同じになる。そして、父親が室内系統の子と父親が野外系統の子の適応度成分を調べることによって、母親から子への異なる資源投資量に対する子の反応の系統間比較を正確に行った。この結果から、異なる環境間の母性効果の違いと子の遺伝子型の反応の関係について議論する予定である。