| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-242

エゾサンショウウオ幼生の生息環境の変化に応じた可塑的な体色パターン

*浅野由佳理(北海道大学水産学部),岸田治(京都大学生態学研究センター),西村欣也(北海道大学水産科学研究院)

生物には体表色に特徴を持つものがいる。その特徴は「目立つもの」と「目立たないもの」に大別される。目立つことの機能として婚姻色、警告色、囮マークが、目立たないことの機能として隠蔽や変装がある。

私達はエゾサンショウウオ(Hynobius retardatus)幼生の体表色に変異があることを野外観察から認識した。また、捕食者であるヤゴの存在下では尾部が黒化すること、そして周囲の暗さによって全身の色が変化することを飼育観察で見つけた。エゾサンショウウオは池に産卵し、孵化した幼生はそこで過ごす。池ではヤゴは水中の構造物に紛れて待ち伏せをし、幼生を攻撃する。攻撃の際には視覚が重要な役割を果たす。幼生はヤゴがいると潜水して静止防御体勢をとる。池には枯葉の堆積した暗い環境と枯葉のない明るい環境がある。私達は幼生が潜水した環境に応じてヤゴからの捕食を回避するのに適応的な機能をもつかもしれないと考えた。

幼生は飼育環境の明暗に応じて体色を変化させる。暗い飼育条件の幼生ほど全身の色が黒化することを確認した後、池での明暗を左右する枯葉の有無とヤゴの有無に応じた体色変化パターンを調べる操作実験を行った。その結果、ヤゴがいると尾部の辺縁部が黒化し、枯葉があると全身が黒化した。また、葉の下の暗所に長くいる個体ほど全身の色が黒化した。

サンショウウオ幼生は周囲の暗さに対応した全身の体色変化を示す。暗い環境では全体の黒化は隠蔽効果をもつ。逆に明るい環境では体表一部の明暗コントラストはその部分を目立たせる。暗い環境での全身の黒化と、明るい環境で急所でない尾部の明暗コントラストは視覚捕食者であるヤゴに対する防御として機能すると考えられる。

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