| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-246

有機農業畑に生息するサクラミミズ(Allolobophora japonica)の生活史について

*雪岡正太(信大院・工),藤山静雄(信大・理),藤田正雄(自然農法国際研究センター),大久保慎二(自然農法国際研究センター)

ツリミミズ科の生活史に関しては主にヨーロッパなどで研究が行われているが、日本での生活史の研究はほとんどない。長野県波田町にある不耕起有機栽培農場にはサクラミミズが数多く生息している。本種は有機農業下で土壌改良者として注目を集めており、その生活史を知ることは土壌生態系内での機能の大きさを解明するには必要不可欠である。

そこで本種を採集し、生態及び形態の調査を行った。6月に採集された個体では色々な成長段階のものがあり、半数くらいが環帯を形成していた。しかし10、11月に採集された個体は同様に色々な大きさのものがいたが、環帯が確認できる個体はほとんどいなかった。

飼育容器に各2個体合計20個体とし、20、15、10℃下で飼育実験を行った。飼育下で一部個体が産卵した。その卵包を20℃条件下においたところ60日程度で孵化した。幼体の湿重量は10mg程度であった。孵化後は順調に成長し60日で70mg付近まで生長した。野外採集個体の成体は秋以降は産卵が見られない。これらの個体が再度越年し繁殖できるかは現在調査中である。

野外調査及び飼育実験より本種は春から夏にかけて産卵し、卵は順次孵化し、それらの個体は亜成体となって越冬すると予想される。採集場所に隣接する耕起畑からはまったく本種が採集されない。不耕起による畑地処理が本種の増殖に大きく影響していると推測される。

中村(1972)の北海道での報告によると本種の成体体重(湿重量)は95〜1240mg(平均508)であるとしている。しかし今回の野外採集個体は121〜391mg(平均219)で大きく異なっていた。この差が何を意味するかについては検討する必要がある。

日本生態学会