| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-248
コオロギやトカゲなどは捕食者に襲われた際、自ら脚や尾などの付属肢を切って捕食者から逃れる自切を行う。コオロギなどで見られる脚の自切では、トカゲの尾の自切のような再生をしないため、自切の影響は一生続く。脚を一本自切するだけでも、捕食者からの回避速度が低下することからも、その後の捕食者に遭遇した場合に捕食される危険性は高くなる。このため、自切した個体が、脚を失う事によって生じる不利益を補うために、行動を可塑的に変化させて捕食者に対応することは有利である。本研究では、コオロギの一種であるマダラスズを用いて、後脚を自切させた個体と自切していない個体とで、鳴く頻度と隠れる頻度に違いが見られるかを比較した。その結果、鳴く頻度は自切した個体の方が高く、隠れる頻度も雌雄共に自切した個体の方が高かった。鳴く頻度を高めると、メスを誘引しやすいという利点があるが、捕食者にも見つかりやすいという欠点がある。したがって、自切したオスは、捕食者に見つかりやすくなる危険性を承知のうえで、繁殖上の利益のために鳴く頻度を高めているのかもしれない。その代わり、自切個体は捕食リスクを軽減するために、隠れる頻度を高めていると考えられる。