| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-250

島嶼性モズの死亡パターンの雌雄差を引き起こす要因

*松井 晋, 日阪万里子, 高木昌興(大阪市大・院理・動物機能生態)

多くの鳥類や他の分類群は、性別によって死亡パターンが異なる.鳥類の死亡パターンの雌雄差は、出生地分散や渡りのコスト、繁殖コスト、体サイズの性的二型に起因する優劣関係などから生じると考えられている.死亡パターンの雌雄差を調べた過去の研究では、ある地域で観察される性比が他地域からの雌雄の加入率の違いに影響された場合、その地域の性比が必ずしも雌雄の死亡率の差を反映しないことが問題となってきた.このため雌雄の死亡パターンの違いやそれに伴う性比の変化を調べるためには、季節的な移動がない個体群を対象にする必要がある.そこで私たちは、沖縄島から東に約360km離れた南大東島(25°50’N, 131°14’E)で、留鳥として隔離分布しているモズLanius bucephalusを対象に、2002-06年の5年間にわたって、非繁殖期のなわばり密度および性比に影響する要因を調べた.モズは社会的一夫一妻で繁殖し、非繁殖期に雌雄共に単独でなわばりを形成する.調査の結果、繁殖期(2−7月)の降水量が多い年ほど、その年の非繁殖期のなわばり密度は雌雄共に有意に減少した.つまり繁殖期の降水は、繁殖後の雄と雌の生存率を低下させると考えられた.また非繁殖期のなわばり密度がより高い年ほど、非繁殖期の性比が雄に偏る傾向が見られた.今回の発表では、調査期間中に最も密度の高かった2006年の非繁殖期における雌雄のなわばり面積となわばり内の環境タイプおよび餌資源量を調べた結果を報告し、繁殖期の気象条件や非繁殖期のなわばりの質が、雄と雌の死亡パターンの差に及ぼす影響について考察する.

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