| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-258
淡水魚類は一般に地理的な隔離を受けやすく,近年の分子系統地理解析から,顕著な地理的分化を含む特徴的な遺伝的集団構造を示すことが明らかになってきた.遺伝的に分化した地理集団は進化・適応や保全の単位として重要であるにもかかわらず,十分に認識されないまま,生息環境の破壊や人為移植などにより大きく攪乱されつつある.分子解析技術が大きく発達し,かつ淡水魚類がどうにか存続している21世紀初頭の現在,速やかに網羅的な系統地理解析を達成し,その情報を効果的に蓄積・発信していくことは,今後の戦略的な学術研究や保全に対して大きく貢献するはずである.
私たちは,淡水魚類の系統地理解析を進めつつ,遺伝的多様性情報の研究,保全,および環境教育における利用を推進するために,日本産淡水魚類のミトコンドリアDNAの塩基配列に基づく遺伝的多様性と系統地理に関する包括的リレーショナル・データベース・システム「GEDIMAP」を構築した.本システムは,Apacheサーバー上のSQLで管理され,PHPによりプログラミングされている.GEDIMAPには,文献・データベース・未発表データに基づくハプロタイプ配列,集団の地理情報やハプロタイプ頻度をはじめ,分類体系,河川・湖沼,文献のデータベースが内包され,外部のDNAデータベースなどともリンクしている.また,検索・選択されたデータに関して,地図の表示や,遺伝的多様性指数・集団間遺伝距離の算出等の簡易解析が可能であり,他のソフトウェアのファイル形式でも入出力できる.内外の研究者をはじめ,遺伝的多様性や保全に関心をもつ一般市民や学校・行政関係者等が利用できるような,わかりやすいブラウザ・インターフェースを有する.
GEDIMAP(β版) URL: http://gedimap.zool.kyoto-u.ac.jp/