| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-262

閉鎖花の分子基盤: コカイタネツケバナをモデルにしたマイクロアレイとRNAi解析

*森長真一(九大・理), 宮崎さおり(基生研), 酒井聡樹(東北大・生命科学), 長谷部光泰(基生研・総研大)

被子植物にみられる繁殖様式は非常に多様で、系統ごとに様々な適応的意義により進化してきた。閉鎖花形質もその一つであり、閉鎖花植物は完全に開花せず受精する花(閉鎖花)と通常の花(開放花)を環境に応じて咲き分ける。この植物は被子植物の60科300種以上で進化しており、適応進化の産物であると考えられている。しかしながら、非閉鎖花植物から閉鎖花植物がどのようにして進化してきたのか、それにはどのような遺伝的変革が必要であったのかといった進化過程に対する問題には、これまでの適応的意義に着目した研究から答えを出すことは難しい。そこで本研究では、アブラナ科の閉鎖花植物であるコカイタネツケバナをモデルに、ゲノム学的・分子生物学的手法を用いてその分子基盤を解析し、閉鎖花形質の進化過程を考察することを試みた。アブラナ科のモデル植物であるシロイヌナズナのマイクロアレイを用いて閉鎖花と開放花間での遺伝子発現量の違いを調べたところ、発現量に違いのある遺伝子を複数同定した。閉鎖花において発現量が減少した遺伝子には閉鎖花形質を特徴づける花弁や雄しべの形態形成に関わる遺伝子が、閉鎖花において発現量が増加した遺伝子にはストレス応答に関わる遺伝子が含まれていた。そこで前者の遺伝子に着目し、シロイヌナズナにおいてRNAi法を用いた遺伝子ノックダウン実験を行なったところ、雄しべ2本が欠失した閉鎖花様の花を咲かせた。これらの結果を元に、花の形態形成とストレス応答に関与する遺伝子ネックワーク間のクロストークに着目して、閉鎖花植物の進化過程について議論する。

日本生態学会