| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-266

rDNA-ITSおよびSSR配列を用いた外生菌根菌ショウロの検出

*松本晃幸,舩戸知聖,霜村典宏(鳥大農)

ショウロ(Rhizopogon roseolus (=R. rubescens))は、海岸砂丘地のクロマツ植栽林に発生する代表的な菌根性食用きのこである。最近は、本菌の人工栽培利用に加えて、外生菌根菌としての機能を海岸クロマツ林の維持・保全などへ利用する点からも注目され、汎用性の高い宿主クロマツへの感染技術開発が積極的に行われている。本研究では、感染技術の評価に必要となる本菌感染苗木の追跡調査、あるいは生態学的調査への利用を目的に、ショウロ菌に特異的なrDNA-ITSとSSR(simple sequence repeat, microsatellite)マーカーの開発を行った。

材料には15府県で採集・分離されたショウロ45株、本菌と同属2種を含む13種16株の外生菌根菌およびクロマツを用いた。種特異的なrDNA-ITS領域増幅用のプライマーは、供試したショウロ全菌株の配列に基づいて作製した。SSRマーカーの開発は、ショウロRhz8-1株の凍結乾燥菌糸体よりCTAB法により抽出した全DNAを用い、 Dual-Suppression-PCR法(Lian and Hogetsu (2002, 2004))に準じて行った。

ITS-rDNAマーカーとして、約474bpの増幅産物が得られる領域を選んだ。SSRマーカーについては、供試したショウロ菌株間で多型の認められない4マーカー(増幅サイズ:86bp〜239bp)を作製した。得られたマーカーのいずれにおいても、クロマツより採取した菌根を材料として本菌に特異的な増幅が明確に確認できた。一方、本菌以外の外生菌根菌およびクロマツを材料とした場合には、本菌と同じ明瞭な増幅はいずれにおいても認められなかった。以上の結果より、上記の5DNAマーカーは生態系におけるショウロ感染菌根のモニターや本菌の分布調査に有用であると考えられる。

日本生態学会