| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-273
近年、多くの河川において河道内の樹林面積の拡大が報告されており、樹林化による従来の自然植生の喪失や洪水時に流れを妨げる等の治水上の問題が懸念されている。砂州が発達した礫床河川では洪水時に砂州が成長または移動し、植生の定着基盤となる砂礫の浸食、堆積が植生の更新に大きな影響を与えている。樹林面積の拡大は河川改修工事や洪水発生頻度の減少など様々な要因が考えられているが、貯水ダムによる流量調節も洪水に伴う土砂移動や冠水などを減少させるため、樹林面積の拡大の一つの要因と考えられる。
本研究では1998年から運用が開始された札内川ダム(北海道十勝川水系札内川)を対象として、ダム運用前後における河道内の樹林面積の変化とダムの流量調節が河道内の植生に与える影響について明らかにする。札内川ダムは洪水調節、渇水時の流況安定、灌漑・水道用水確保、発電を目的とした多目的ダムであり、ダムの運用以前は2年に一度の確率で発生していた200m3/sの出水は運用開始後は発生しない計画である。解析にはカラー航空写真(1977、1978、1991、1995、2000、2006年)と地形図(1/2500)を用い、目視により河畔林、砂礫堆、流路の区分図を作成し、ダム下流でのダム運用前後の流路変動と樹林面積の変化を明らかにする。また、流量調節による冠水頻度の変化と樹林面積との関係を明らかにする。