| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-282

樹種と胸高直径構成からの樹洞密度推定

小野寺賢介(北海道林試)

樹洞は、鳥類や哺乳類など広範な生物が繁殖場やねぐらとして利用する森林の重要な構造である。しかし、日本では樹洞密度に関するデータはほとんどない。そこで、比較的容易にデータを得る事の出来る、森林の樹種や胸高直径(DBH)の構成から樹洞密度を推定する方法を検討した。25×25mの方形区を北海道渡島半島に107個設定し(うち72個は歌才ブナ林に設定)、毎木調査を行うとともに樹洞の有無を調査した。ここで樹洞は、自然に腐朽して形成された樹洞のみを含み、キツツキにより形成された樹洞を含まない。また、入口の直径2.5cm以上のものを樹洞とし、内部の奥行きなどの形状は吟味していない。樹種ごとにDBHと樹洞のある確率の関係をロジステック回帰によって求めたところ、イタヤカエデがもっとも樹洞が多く、ついでシナノキ、カンバ類、ブナが多く、ミズナラで樹洞が少なかった。またDBHが大きいほど樹洞のある確率が高い事が分かった。

このロジステック回帰式をもちいて各調査個体の樹洞のある確率の期待値をもとめ、方形区内の個体の期待値を合計して方形区の推定樹洞密度とした。各方形区で推定樹洞密度と実際の樹洞密度を比較したところ相関は見られたがバラツキは大きかった(R2=0.21)。そこで、複数の方形区の調査から森林全体の樹洞密度を推定する事を想定して推定方法を検討した。歌才ブナ林に設定した72個の方形区からランダムに複数(5,10,15,20個)の方形区を抽出し、推定樹洞密度の平均値と歌才の全方形区のデータから求めた実際の樹洞密度の平均値を比較することを100回繰り返した。その結果、方形区を10個抽出した場合、全100回の内68回で推定樹洞密度が全方形区から求めた実際の樹洞密度の平均値から誤差±10%の範囲内に入った。

日本生態学会