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一般講演(ポスター発表) P3-285
近年,自然再生事業やバイオマス利活用事業等の地域ベーズの取組みが全国各地で展開されている。これらのうち,先進事例や成功事例はメディア等を通じて紹介されることが多いが,実際には何をもって成功ないし先進的とするかという点はあまり明確でなく,科学的な評価・モニタリングも十分でないことが少なくない。また,生態系の予測には必ず不確実性が伴うことから,自然再生事業では順応的管理の考え方が適用されているが,そのためには「容認できる失敗から学ぶことを前提とした柔軟性」が必要となる。つまり,順応的管理の考え方の実質化には,積極的に過去の「失敗から学ぶ」ことが不可欠なのである。
しかしながら,これらの多くの事業は国や地方自治体による財政支援を受けて,公的な組織が事業主体になるか,あるいは事業主体と密接な関係にあるため,たとえ事業の結果が実施主体の内側から見た場合には「失敗」であっても,外側に「失敗」として伝わることは稀である。先進事例の事例集やデータベースの類も整備されつつあるが,「失敗から学ぶ」という視点から整理されたものはまだない。
そこで,失敗事例の収集・解析の第一歩として,本研究発表では,自然再生事業,バイオマス利活用事業に関する活動等の事例を既存文献やWEB情報を用いて包括的に収集した。そのうえで,収集した事例情報に基づく限りにおいて,「失敗から学ぶ」という視点での解析がどこまで可能か検討した。
結果として,文献・ネット検索により,自然再生関連の事業として延べ163件(一部重複あり),バイオマス利活用関連の事業として延べ383件(一部重複あり),NPO法人などによる草の根の環境保全再生等の取組事例を1,031件収集することができた。このうち失敗や課題に関する記述を前述の順にそれぞれ81件,103件,311件あまり収集することができた。これらのデータを目的に沿って解析,考察した。