| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-288

県域スケールでの広葉樹林のシカ被害モニタリング法の検討

*藤木大介,坂田宏志(兵庫県立大)

日本各地でニホンジカの採食による広葉樹林の下層植生の衰退被害が広がっている。都道府県が立てるシカ保護管理計画の中で、森林被害管理を実行していくためには、県域スケールで被害の実態をモニタリングする必要がある。本研究では、問診表を用いた簡易現地調査を行うことにより、兵庫県域スケールで広葉樹林のシカ被害の空間的広がりの把握を試みた。その結果、345調査林分のうち、約36.6%の林分でシカの採食による低木層の被度の減少が生じていることが示唆された。約7%の林分では、低木層の被度が10%未満にまで減少していた。低木層の被度が10%未満の激害林分は県中央部に集中的に分布しており、これらの地域では低木層がほぼ消滅した林分が面的に存在することが示唆された。

亜高木層や高木層構成樹への樹皮剥ぎ被害の増加と低木層の被度の減少の間には強い相関が認められた。また、急傾斜地で低木層の被度が低い林分では、高い確率で雨滴侵食が発生していることが明らかとなった。雨滴侵食の面積割合とリター層の被覆度との間には強い関連性が存在することから、雨滴侵食の発生は低木層の消失に起因するリター層の流亡が原因であると推測された。

本調査の結果、兵庫県内におけるシカによる広葉樹林衰退被害の傾向とその地理的分布を明らかにできた。また、低木層の被度を用いてシカ被害の進行程度を序列化できることが示唆された。雨滴侵食において被害発生の要因の分析もある程度行えたことから、問診表を用いた簡易現地調査は、県域スケールでの広葉樹林被害把握のためのモニタリング調査として実用性があるものと思われた。

日本生態学会