| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-289

乾燥程度の異なるモンゴル草原生態系において放牧の有無が表層土壌の特性に与える影響

*近藤順治,廣部 宗(岡山大・院・環境),Uugantsetseg Khorloo (Institute of Geoecology),藤田 昇(京大・生態研センター),坂本圭児,吉川 賢(岡山大 ・ 院・環境)

乾燥地・半乾燥地の草原生態系において、大型哺乳類による被食は純一次生産量や養分の循環速度に対し、正にも負にも影響を与え得ることが報告されている。 例えば、年平均を超える降水量でかつ高い土壌養分条件下では、植物の素早い補償成長によって年間の純一次生産の総量および養分循環速度が増加する場合がある。一方で、植食者の選択的な草食によって成長速度の速い種から遅い種へと種組成が変化することにより、純一次生産量の減少や養分の循環速度および土壌中の窒素利用可能性の低下などが起こり得る。 このように、大型哺乳類による被食の影響の方向は土壌養分や水分、気候条件などの相互作用によって決定されると考えられる。 モンゴル国では緯度に沿って乾燥の傾度があり南ほど乾燥程度は強い。それに伴い北から森林ステップ、ステップ、乾燥ステップと草原生態系のタイプが変化する。 本研究では、気候条件に注目し、乾燥程度の異なる3つの草原生態系において、放牧による被食の有無が表層土壌の化学的特性に与える影響を明らかにすることを目的とした。 3タイプの草原生態系において被食防護柵の内外それぞれ10カ所で表層土壌を採取し、土壌EC,pH(H2O),無機態窒素濃度,全炭素濃度および全窒素濃度を測定した。2元配置の分散分析を用いて生態系タイプおよび被食の有無の2要因で比較したところ、モンゴル草原生態系において放牧による被食は、乾燥程度が大きく異なっていても表層土壌の特性に負の影響を与えることが示唆された。

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