| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-290

兵庫県におけるニホンジカ目撃効率と広葉樹林の下層植生衰退度との関係

*岸本康誉(兵庫県森林動物研究セ),藤木大介,坂田宏志(兵庫県立大/兵庫県森林動物研究セ)

近年、日本各地で、ニホンジカの個体数増加に伴う森林下層植生の衰退が報告されている。分布が広域に及ぶ本種の生息地管理を行うには、広域スケールで適切かつ効率的なモニタリング手法を用いて、生息密度と下層植生量との関係性を解明する必要がある。

そこで、本研究では、兵庫県において県域スケールで把握された低木層の植被率と、狩猟者が狩猟期間中に目撃および捕獲した数について全県で集計したニホンジカの目撃効率を用いて、ニホンジカの密度と下層植生の衰退との関係を解析した。ニホンジカの目撃効率に加え、下層植生の現存量に影響する可能性のある環境要因として、林分タイプ、傾斜、斜面方位、林冠の高さを説明変数として加えることにより、シカの生息密度以外に立地環境が下層植生現存量に与える影響についても検討した。また、ニホンジカの時空間的な密度分布構造の影響を検証するため、目撃効率は1998年度から2005年度までの8年分のデータを用い、植生調査林分を中心に、半径0.5kmから30kmの範囲で発生させたバッファ内の値を算出した。各距離および調査年の組み合わせで算出した目撃効率と下層植生との関係について累積ロジットモデルを用いて解析した。

AICを基準としたモデル選択の結果、時系列的な影響については、密度指標として用いた目撃効率の累積年数が多いほど、モデルの適合度が高いというわけではなく、現在の下層植生の衰退度は過去4年間の目撃効率との適合度が高いという結果となった。さらに、衰退度は、年度別にみると、植生調査時点の目撃効率との適合度が低く、当該年を除く過去3年間の目撃効率との適合度が最も高い結果となった。本大会では、これらの累積的な影響に加え、空間的な影響を考慮し、下層植生の衰退とニホンジカ目撃効率との時間的空間的関係性について考察する。

日本生態学会