| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-292

仁淀川流域における地形と土地利用が河川水質に及ぼす影響

*福澤加里部, 徳地直子, 鎌内宏光, 長谷川尚史, 吉岡崇仁, 柴田昌三, 山下洋(京大フィールド研)

森林や農地など流域からの栄養塩流出は富栄養化など河川生態系に影響を及ぼすことが懸念されている。中でも窒素は生元素として重要であると同時に肥料などとして河川への流出も多いが、土地利用だけでなく地形によっても影響を受けると考えられている。本研究では、流域の大部分が急傾斜地である高知県仁淀川流域において、河川水中の溶存窒素・炭素濃度と地形および農地面積率との関係を解明した。地形との関係を明らかにするために、約40年生のスギ林からなる流域面積9-38 haの15河川において流域面積、傾斜、最低標高、標高差を測定した。これらの河川におけるNO3-濃度は< 0.001-0.40 mgN L-1であり、いずれの地形因子との間にも有意な相関はなかったが、NO3-と溶存有機炭素(DOC)の間に負の相関(R = -0.72, P < 0.001)があり、有機物起源の両者が密接に関係していることが示唆された。一方、農地面積率との関係を解析するために森林と農地を含む流域面積61-1095 haの11河川を対象とした解析では、NO3-濃度が0.28-0.98mgN L-1であり、上流(森林地帯)に対する流域末端の比は147-203 %と農地通過により濃度は上昇した。土地利用因子として測定した茶畑面積率、その他の畑面積率、水田面積率との関係では、NO3-濃度はこれらの和である総農地面積率と相関があり(R = 0.55, P = 0.13)、さらに重回帰分析で説明できた。しかし、個々の面積率との関係が弱かった。今回は10月のみの解析であり、今後は施肥時期や水田湛水の時期を含めた解析が必要であると考えられた。

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