| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-298

都市の高層化が鳥類の営巣分布に及ぼす影響

橋本啓史(名城大・農)

大都市における高層化は,都市の緑の分布形態にも大きな変化をもたらしている.また,“鳥の目”の高層建築物による都市の緑の視覚的な分断化は,都市に生息する鳥類のなわばり防衛や巣の防衛に不利な影響を与えることが予想される.そこで,都市の高層化が鳥類の分布に与える影響を明らかにするため,近年の都市高層化が著しい中国・北京市街地において,カササギ Pica pica の営巣分布を主な対象として調査を開始した.

カササギは広くユーラシア大陸から北米大陸西部に分布し,農耕地から樹木の多い市街地にかけて繁殖している.本種は比較的大都市での生活に成功している樹林性鳥類と考えられるが,巣とその周辺の樹上などを防衛するB型の繁殖なわばりを形成することが知られ,超高層ビルの乱立はなわばり防衛に不利な変化となっている可能性がある.

北京市中心部の三次元都市モデルを,人工衛星 ALOS(だいち)搭載の PRISM センサによる前方視・後方視のペア画像から作成した(DSM作成は RESTEC).最近は日本の主要都市ではレーザースキャナ・データが販売されているが,提供されていない地方都市や海外では,空間分解能が20 m グリッド程度とだいぶ劣るものの,PRISM センサによる DSM 作成は,今後,都市景観解析の重要なツールとなる可能性を秘めている.

2007年5月に,高層ビルが立ち並ぶ市街地(王府井および東城根遺跡公園周辺)と四合院と呼ばれる低層住宅地の残る胡同(鼓楼周辺)の2つの地区においてカササギの巣の位置を記録した.必ずしも全ての巣が今年利用されていたものとは確認できてはいないが,胡同地区の方が市街地に比べてカササギの営巣密度が高かった.例数がまだ少ないが,高層建築物が立ち並ぶ市街地では,交差点付近などの比較的視界の広い場所に巣を作る傾向がありそうだ.

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