| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-299

都市内残存湿地における埋土種子解析と管理・利用計画

*相澤章仁(千葉大・自然科学),百原新(千葉大・園芸学),田代順孝(千葉大・園芸学)

都市の中に残された二次的な自然地は生態的な機能だけでなく、人々がその自然と共に育んできた文化・歴史的な機能も保持している。しかしこのような自然地は開発によって孤立・分断化している上、人々の生活が変化したことにより、かつての環境が崩壊しつつある。今回対象地とした根木内歴史公園(千葉県松戸市)の湿地部は、上富士川の氾濫原で水田として利用されてきたが、1960年代ごろから放棄され、さらには近年の上富士川底の掘削工事によってその氾濫が抑えられるようになった。現在は隣接する山からの絞り水によってのみ水分環境が保たれ、タコノアシ、カワヂシャ、ミクリ(いずれも環境省レッドリストの準絶滅危惧種)などの稀少種が生息している。

本研究では、この根木内歴史公園の湿地部を優占植生(オギ、ヨシ、キショウブ、移行帯)や草刈り頻度を考慮して10のエリアに分け、表土中の種子を調べることにより今後の植生の変化やリスクとなる要因を推測し、その結果を管理計画に反映することを目的とした。

2007年12月に各エリア内の土を3プロット、200mlずつ採集し、実体顕微鏡を用いてその土の中に含まれる種子の種類と数を直接計測した。各エリア内での出現種数は9〜48種で、最も種数が少ないエリアは2006年秋にヨシを刈り取らずに一年間放置していたエリアであった。また、希少種の種子は現存する個体の近辺にしか存在しなかった。草刈りという管理行動がかつての撹乱の代わりとなり、希少種をはじめとした撹乱依存群集の存続に貢献していると推測できるが、出水による種子散布というシステムは失われたままであるので、今後この事が生態系の持続性に影響を及ぼすことを考慮しながら管理を続けていく必要がある。

日本生態学会