| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-300

都市の孤立林を利用する哺乳類における種間関係の検討 -自動撮影装置によるアプローチ-

*松田尚子(首都大院・理工・生命),小林まや(首都大院・理工・生命),坂本信介(都立大・院・理),鈴木惟司(首都大・生命科学)

都市に点在する森林は、様々な生物にとって食物や営巣場所などの資源を提供する場である。しかし個々の緑地は孤立し狭小であるため、資源は限られている。近年日本では、自動撮影装置を用いることで都市緑地を利用する哺乳類相が明らかになってきたが、これらの哺乳類が、限られた資源を巡りどのような関係にあるのかは明らかでない。そこで本研究では、自動撮影装置から得られたデータを用いて、都市緑地における哺乳類の種間関係に関する検討を試みた。

調査は、2005年5月より東京都八王子市の首都大学東京(東京都立大学)構内にある、面積約10haの孤立した緑地にて行った。撮影された哺乳類のうち、特に撮影枚数の多かったタヌキ・ネコ・アカネズミの3種間について、撮影頻度における相関関係の有無を検討した。タヌキ−ネコ、ネコ−アカネズミ、アカネズミ−タヌキのペアについて、同じ日、同じ場所で得られた撮影枚数を比較すると、これら全てのペアで有意な負の相関が見られた。しかし、この3種は撮影枚数が月により大きくバラついていたため、各種の月による撮影頻度の違いが結果に影響を与えている可能性がある。そこで、比較する2種が共に高頻度で撮影された月に得られたデータのみを用いて同様の解析を行ったところ、タヌキ−ネコ間では有意な相関は見られなかった。一方、ネコ−アカネズミ、アカネズミ−タヌキ間には有意な負の相関が見られた。このことから、タヌキ−ネコ間においては、2種の撮影頻度の時期的な違いが撮影枚数の負の相関関係に影響を与えていることがわかった。また、ネコ−アカネズミ、アカネズミ−タヌキの間では、2種間に排他的関係が存在することが示唆された。

日本生態学会