| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-301
都市近郊にはかつて農用林や薪炭林として利用されていた里山や公園・社寺林などの孤立森林が存在し、都市部の生物多様性保全を考える上で重要な役割を果たす。食虫類、齧歯類を含む小型哺乳類は、移動能力が比較的低いため生息地が孤立すれば避難や移入が困難になり、環境に応じた種構成の変化が起こりやすいことが予想される。このように、様々な環境条件の孤立森林に生息する小型哺乳類を明らかにし、比較することによって、森林の分断化がもたらす環境変化が小型哺乳類相に与える影響を検討できると考えられる。本研究では、福井平野に散在する孤立森林の面積や孤立度と生息する小型哺乳類の関係を明らかにするとともに、山地との比較を行い、孤立森林に生息する小型哺乳類の種構成に関わる要因を検討した。
調査期間は、2007年6月12日〜8月1日と10月15日〜12月11日の年二回、シャーマントラップとピットフォールトラップ各20個(森林面積が0.1km*2以下の場合は各10個)を孤立森林11地点、山地3地点に設置して捕獲調査を行った。また、モグラ類の生息に関しては坑道の有無も参考とした。孤立森林での確認種数は、最も面積の狭い丸山(0.03km*2)では0種、最も面積の広い田尻栃谷(2.51km*2)ではアカネズミ、コウベモグラ、ヒミズの3種で、それら2地点以外の9地点ではヒミズを除いた2種のみが確認された。山地の3地点では孤立森林で確認された3種に加え、ヒメネズミ、スミスネズミ、ジネズミが捕獲され4〜6種の生息が確認された。以上のように、森林面積が種数に影響している可能性が示唆されたが、近隣山地からの距離と種数には明確な傾向がみられなかった。山地には孤立森林では確認されなかった種が生息していることから、それらの種に関しては距離に関係なく山地から孤立森林への移入自体がないと考えられた。