| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-305

都市域森林群落における常緑低木種の分布特性

*伊藤千恵,藤原一繪(横浜国大・院・環境情報)

都市域の森林群落では、特定の種の急増が指摘されているが、それらの種の異常な増加は正常な遷移を妨げることや種組成に偏りを与えることになる可能性が指摘されている。一方、都市の森林群落は、都市化に伴う開発により、林分が分断・孤立化し、林縁の増加により陽光が豊富な乾燥した立地が増える変化があることも指摘されている。これらを踏まえ、都市域の森林群落内のどんな環境で、どのような種が、どのような生育段階にあるのかを把握することは、都市域の森林群落の保全・管理を考える上で重要である。そこで、環境と各種の個体サイズとの対応を解明することを目的とする。

調査は、横浜市鶴見区北部の住宅街に残存する林分で、林縁から林内に向かい5×5mの方形区を林分サイズに応じて設置した。ライフサイクルが比較的短く都市化の影響を受けていると考えられ、林縁から林内に広く分布する常緑低木種に注目し、シュロ、アオキ、ヤツデ、シロダモ、ヤブニッケイ、マンリョウ、ネズミモチ、トウネズミモチ、ヒサカキ、ヤブツバキの10種を対象とし、地際直径、胸高直径、樹高、繁殖の有無を記録した。同時に各方形区で植生、相対光量子密度、土壌水分、土壌硬度を調べた。

全14林分、47方形区を調査した結果、最も個体数が多く確認された種は、シュロで、次いでアオキ、シロダモであった。繁殖個体が最も多かったのはアオキで、繁殖個体サイズに達する個体も数多く確認された。シュロは広く出現が確認されたが、繁殖個体は調査地点では限られていた。一方、ヤブニッケイは出現地点が限られており、繁殖個体も少なかった。環境解析の結果も踏まえ、これらの要因を考察する。

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