| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-307
我が国では歴史的に地震や大火による災害が各地で発生してきた。古くは関東大震災や東京大空襲、また近年では阪神淡路大震災等によって人命及び社会基盤に大きな被害を受けている。被災地の検証に基づき、樹木が建築物の倒壊防止あるいは焼止り線として機能した事例が報告されたことによって、災害に強い社会基盤整備へ向けた一つの方向として樹木の有する災害防止機能が再び見直されている。
樹木の防火機能は主として火や熱に対する抵抗と火災の延焼をくい止める効果によって発揮される。一般に常緑植物や葉肉の厚い植物は防火機能が高いとされ、一方、枝や葉に油脂成分を多く含む針葉樹やタケ、ササ類は防火機能が低く、延焼の可能性が高いと判定されている。また、樹木の形態や季節によって大差が生じるともされている。火災の延焼や熱を防ぐには適切な樹木と空間の配置が重要な課題として位置付けられている。本報では過去に発生したいくつかの災害の記録から、地震その他の火災を伴う災害発生時に樹木が発揮した防火記録あるいは現在も焼け残り、生存している樹木について考察を行った。既存資料から、東京・横浜地域では、スダジイ、タブノキ等の常緑樹あるいは夏緑樹であるイチョウの防火機能や焼け残りに関する記録が認められた。これらの記録は今後の都市計画あるいは森林整備計画等においても貴重な情報を含んでいるものと考えられる。