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シンポジウム S03-1

オオクチバスはどうする?〜外来生物法の目玉のその後

中井克樹(琵琶湖博物館)

オオクチバスは、外来生物法(2005年6月施行)の規制対象である特定外来生物として“指定の目玉”とされ、宮城県伊豆沼、栃木県羽田沼、石川県片野鴨池、愛知県犬山市のため池群、滋賀県琵琶湖、鹿児島県藺牟田池の6つの水域で、環境省によるオオクチバス等防除モデル事業が始まっている。ここではモデル事業の現状と課題を紹介し、今後の対策のあり方について私見を述べたい。

この防除事業の対象生物はその名称から「オオクチバス等」とされているが、6つの水域のうち伊豆沼を除く5つの水域では、ブルーギルも生息し防除対象に含まれている。一方で、伊豆沼において、技術開発、漁業者との連携、市民参加、希少種の保護等の観点から、外来魚防除の取り組みが最も総合的に進展しており、環境省もそれにならい「伊豆沼方式」と銘打ったマニュアルを製作し、研修会も開催している。伊豆沼方式における外来魚の主要な抑制手段は人工産卵床の設置と稚魚群のすくい取りで、どちらの手段もオオクチバスの抑制には効果があるが(ただし、人工産卵床のオオクチバスに対する有効性も限定的である。)、ブルーギルに対しては繁殖生態が異なるために有効性が低いと考えられる。そのうえ、ブルーギルは5水域でオオクチバスを凌ぐ優占度を示していることから考えて、ブルーギルに特化した捕獲等の手法の検討が早急に必要である。幸い、水産庁では、2006年度までの3年間、ブルーギル食害等影響調査を実施し、その生態的特性を利用した捕獲方法もいくつか検討されており、モデル事業でも大いに参考とすべきである。

防除モデル事業は2008年度で最終年度を迎えるが、その後こうした事業が継続されないのであれば、全国の多様な水域環境に蔓延している「オオクチバス等」に対して、さまざまな実施主体が防除を行ううえで真にモデルとして参照できるような成果が求められ、最終年度は、まさに正念場である。

日本生態学会