| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


シンポジウム S03-2

アライグマはどうする?〜防除事業全国展開の行く末

池田透(北海道大学)

アライグマは、外来生物法における特定外来生物種に第1次指定された日本では代表的な外来哺乳動物であり、2007年12月時点において5道府県、133市町村、3団体・個人が外来生物法に基づくアライグマ防除計画の確認・認定を国から受けるに至っている。従来の有害鳥獣捕獲による対策からは進展した感はあるが、一時的情報を含むとすでに全国に拡大しているアライグマの状況を考慮すると未だ残された課題は多い。

第一に、防除計画を立てている自治体において、都道府県レベルと市町村レベルでの対策における役割分担が明確ではなく、同列的なものになっていることから、生息状況のモニタリングデータの集約等に支障をきたす事態も生じており、国の役割を含めた包括的防除体制の構築が急務となっている。

また、アライグマ対策は農業等被害防除が主目的とされることが多いが、被害が低下すると対策意欲も低下し、かつ対策の基礎となる生態調査への住民理解が低下するといった問題が生じている。地域的根絶や継続的管理を達成するためには、農業等被害防除から生態系被害防除を主目的とした対策への転換が必要と考える。

一方で、管理手法としては、各地の調査から捕獲の効果は明らかとなってきており、北海道からは年に3週間の捕獲努力を継続することだけでも2頭/kmまでの生息密度に低下させることが可能という結果も得られている。全国に分布が拡大すると、対策以前に諦観ムードが漂いがちであるが、蓄積した科学的データをもとに対策の効果を正しく認識してもらうことも必要である。

また、諸外国の対策成功例においては、影響を受けた在来種・生態系の復元事業を一体化することにより市民の理解を得ている場合が多い。アライグマ対策においても、今後はニホンザリガニやトウキョウサンショウウオなどの在来種・生態系の復元と一体化した対策を展開することが社会的には対策促進の効果を持つものと期待される。

日本生態学会