| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


シンポジウム S03-3

外来雑草はどうする?〜緑化植物の巨大な壁

村中孝司(牛久自然観察の森)

2005年6月に外来生物法が施行されて以降,特定外来生物の選定が分類群ごとに進められてきた.現在,特定外来生物に指定された植物はナガエツルノゲイトウ,オオキンケイギク,アレチウリなど,わずか12種である.これらの種の中には必ずしも生態系等に被害をもたらしているとは限らない.一方,シナダレスズメガヤのように河川の生態系への影響が大きい外来植物は社会的な理由などから指定されていないものもある.すでに蔓延した外来植物の防除を早急に進めなければ,回復が困難になるまでに問題が深刻化する可能性がある.さらに,緑化植物など利用性の高さから指定が未だに見送られている外来植物も数多い.現行法では逸出しないような管理下で利用を継続しつつ,既に野生化したものについて防除を推進することが難しいためである.また,セイタカアワダチソウのように全国的に蔓延したものについては,指定による社会的混乱や防除の効果が見込めないことなどの理由から指定が見送られている.地域の優先順位を付すことも難しい.指定と防除がより現実的になるような外来生物法の見直しを提案するとともに,被害実態を重視した外来生物のリスク評価と特定外来生物の指定が必要である.

特定外来生物に指定された種や侵略性の大きい外来植物の中には,未だ具体的な防除手法が示されず,予算が限られていることも相まって,このような外来植物の防除があまり進められていないのが実態である.また,利用性の高い緑化植物などについては緑化材料の代替物が提案されているが,それらもまた外来植物である場合や「郷土種」と称したユーラシア産あるいは国内の別の地域の種子を利用している場合も数多い.侵略性の大きい外来緑化植物の利用を制限し,既に蔓延したものの有効な防除モデルを構築するとともに,被害を未然に防止するための緑化材料や手法の検討が必要である.

日本生態学会