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シンポジウム S03-4
小笠原諸島では、1980年代から急速に昆虫類の減少が始まり、固有種のチョウ2種、トンボ5種、セミ1種をはじめ、甲虫類、ハナバチ類など多くの固有種が絶滅の危機にさらされている。昆虫減少の原因として密猟、開発、他の外来種との競合が疑われていたが、それらで説明するには矛盾があり、真の原因は別にあると思われた。検討の結果、1960年代に侵入し、1980年代から2000年にかけて分布域を拡大したグリーンアノールこそが真の原因と考えられるようになった。先に侵入したハワイやグアム、サイパンなどではこのような被害の報告が無かったために、原因の解明が遅れたこともある。小笠原だけで何故被害が深刻化したかという点に関しては、小笠原のグリーンアノールの個体群密度が1000頭/haと大変高いことが関係していよう。
一方で、小笠原が目指している世界遺産の申請には外来種対策が欠かせず、深刻な影響を与えているアノール対策は必須である。しかし、個体群密度が高いので、全島からの根絶は簡単にはできない。しかし、地域的根絶、あるいは低密度化の技術開発は、希少種保護と更なる分布拡大を防ぐためにも欠かせないので研究を進めている。同時に、離島などに残された希少固有昆虫は個体群が小さくなり、個体数のふらつき、環境のふらつきによる絶滅の危機が迫っている。そのため、ハビタット管理や飼育個体群の確立も含めた保護に必要な研究を行っている。