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シンポジウム S03-6
外来生物の導入制限は人間の病気の検疫から出発し,家畜や栽培植物の害虫や病気に拡張された.さらに特定外来生物法により野外の自然に有害な生物にまで拡張されている.日本の動物検疫や植物検疫では,(1)リスク評価,(2)境界(国境や地域の境)での導入阻止,(3)侵入初期の検知,(4) 侵入初期の緊急対処,(5)根絶,などが行われている.このうち日本の外来生物法では3番と4番が実装されていない.また2番においても国境だけが対象になっている.
なお動植物検疫のリスク評価では,非意図的な導入に対処するため有害な外来生物の侵入経路の評価も行う.短所として生物の相互作用の中で補食と寄生は考慮されているが競争は無視されており,また水産生物への影響も考慮されていない.
外来植物を確実に根絶できるのはおよそ100m×100mの範囲を100万円かけて行う事業程度までであるらしい.本当に外来生物の侵入を阻止するなら,この程度の面積になる前に対処する必要がある.侵入後に,発見,調査,審議会,閣議,と手続きを踏んで特定外来生物に指定していたのでは間に合わないだろう.未導入の種を事前に特定外来生物に指定しておくことと,モニタリング態勢,初期のエマージェンシー・コントロールが必要である.またこれだけの努力をかけるのに値する外来生物であることを社会的に合意できるようなリスク評価も重要である.
外来植物のリスク評価ではオーストラリアで実用化されている方式が日本本土や小笠原なども含めて世界のさまざまな地域で試みられており,アメリカや地中海・ヨーロッパ地域のリスク評価方式もあるが,おおむね有効な判定ができるようだ.基本的には,他地域での侵入実績は共通して重要な項目であるが,生物学的な特徴は地域によって重要な項目に違いがあって一定しないようだ.