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シンポジウム S04-5
表土を用いた法面緑化工法(表土利用工)とは,緑化対象地に表土を設置して,埋土種子や再生可能な根茎の断片や鱗茎などを芽生えさせて生育させる緑化工法のことである。この工法は,のり面緑化において生物多様性に配慮する必要性が高まった10年程前から盛んに研究されるようになった。この工法で使用する表土は森林のものであることが多く,森林土壌中の土壌シードバンク(埋土種子集団)には通常,先駆性植物の種子が多く含まれているため,表土利用工ではそれらが施工後早期に発芽・生育することによる短期間の緑化が期待できる。また,この工法は,造成工事の際に削り取られる表土を利用する場合には,限られた資源の有効利用の点でも評価できる。土壌シードバンクは多くの在来種の種子によって構成されており,地域に特有の種組成や,遺伝的特性や変異が備わっているため優良な緑化材料であると言えるが,その反面で外来種の種子を含む負の面を併せ持つ。そのような緑化材料として諸刃の剣の性質を持つ森林表土を用いた緑化工法について,施工方法と,成立する植物群落の経年変化,生態学的修復・創造技術としての課題について述べる。