| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


シンポジウム S06-1

微粒炭分析からみた阿蘇の半自然草原の成立

小椋純一(京都精華大学)

阿蘇外輪山で採取した土壌試料に含まれる微粒炭の形態,また黒色土最下層の年代などを調べることにより,その草原の歴史を検討した(小椋 2003)。

土壌試料採取地は,阿蘇外輪山の北部に位置する大観峰の北東約500mのところである。その地点における工事法面の上端から,下方170cmまでの土壌試料を5cmごとに採取した。そのほとんどは黒色土であるが,上端から82cmのところから下に約16cmの厚さでアカホヤ火山灰と見られる土層が見られた。 

採取した土壌試料の半分について,それぞれ2立方cmを花粉分析に準じた方法で薬品処理をして微粒炭を抽出した。また,長さが100μm以上の微粒炭について,デジタルカメラで800倍の倍率で順次50枚撮影した。撮影した微粒炭は,試料ごとに形態分類をした。一方,黒色土最下層部の土壌の年代測定を行った。

その結果,黒色土の各試料に含まれる微粒炭には,その表面形態から草本植物起源と考えられるものが多く含まれ,また微粒炭の形態が比較的単純に分類できることから,もとの草本植生は比較的単純なものであった可能性が高いと考えられる。

一方,微粒炭が多く出現しはじめる下部土層におけるC14年代は8640±35 BPであった。較正した暦年代は7653calBC〜7594calBC(75.4%)であることから,当該地の草原植生は,おおよそ1万年前から頻繁に火が入ることにより維持されてきたものと考えられる。この結果は,植物珪酸体分析などによる研究結果(宮縁,杉山 2006)とも矛盾しない。

文献

小椋純一,山本進一,池田 晃子(2002): 微粒炭分析から見た阿蘇外輪山の草原の起源,名古屋大学加速器質量分析計業績報告書(13),236-240.

宮縁育夫,杉山真二(2006):阿蘇カルデラ東方域のテフラ累層における最近約3万年間の植物珪酸体分析,第四紀研究 45(1),15-28.

日本生態学会