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シンポジウム S07-6
南硫黄の昆虫相については、1982年の調査でも、150種程しか記録されず、単調なことが知られていた。今回の調査はさらに期間が短かく100種弱の記録にとどまった。しかし、すでに同定が終了した53種のうち11種が島新記録であり、これは手薄だった山頂部で2日間の調査を行えたことと、各種トラップによる効果と考えられる。ただし、直前の5月に島を直撃した大型台風により植生に影響があり、また、滞在期間が満月にあたり夜行性昆虫のライト・トラップへの飛来が非常に少なかったことは残念である。
調査では、南硫黄の昆虫の少なさを痛感した。小笠原群島そのものが、昆虫の多い場所ではないが、南硫黄では、木々のスイーピングやビーティングでも、10回で昆虫数匹、というように、内地はもちろん、小笠原群島でも考えられないほどに昆虫は密度、個体数とも少なかった。これも、南硫黄のように歴史が新しく、面積が小さく、さらに急峻な地形の海洋島の特徴と考えられる。
これまでに判明した中では、島の歴史が新しいとされる割には、固有属が1種、固有種も数種が知られていること,陸水が欠如するため小笠原群島に分布するものの中で、水生のトンボ目、トビケラ目などは分布しないこと、また、環境的には生息が考えられる種の中で、カマアシムシ目、コムシ目、シロアリモドキ目、カマキリ目、シロアリ目、バッタ目、アザミウマ目などは、記録がないこと、などは注目される。食材性の甲虫でも、タマムシ、ハナノミ科が分布しない。また、多産する海鳥の死体に依存する昆虫が多いことも特徴である。
土壌生物では、結果が判明しているものだけでも、3種の未記載種を含む46種のササラダニ類、世界的にもおそらく記録のない、陸生のミズムシが発見されたことが特筆される。なお、これらの結果は、東京都及び首都大学東京により行われた総合調査の成果の一部である。