| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


シンポジウム S09-3

トキの再導入 ー中国の取り組みと日本の現状ー

山岸哲((財)山階鳥類研究所)

今からおよそ30年前の1981年という年は、日本のトキにとっても、中国のトキにとっても、特別の意味をもった年であった。日本では佐渡島で野生に残った5羽が全個体捕獲されて飼育下に移され、実質的に野生のトキが絶滅した年であったし、逆に中国では、絶滅したと信じられていたものが、陝西省洋県、秦嶺山脈南麓の標高1,200mの姚家溝で7羽が再発見された年であった。

その後、中国では飼育増殖された個体が約500羽になり、野生の500羽と加えると10,000羽をこえた。そこで、2004年には12羽、2005年には11羽が生息域内である洋県の華陽鎮というところで放鳥された。さらに、2007年には、かつては生息していたが現在は生息していない、陝西省寧陝県の寨●口で26羽が放鳥された。一方、日本では、佐渡のトキ保護センターで、昨年ようやく飼育個体数が100羽をこえ、今年の秋の試験放鳥に備え、それらのうちの5羽が順化施設に放たれ訓練中である。

これまで、トキの飼育増殖面(生息域外保全)では中国との国際交流がかなり図られ、知識と技術の交換が行われてきて、その成果が飼育個体数の増加につながってきたように思われるが、生態的情報の交換は必ずしも十分だったとはいえない。試験放鳥を目前にして、日本と中国のトキの現状について、その相違点と共通点を洗い出し、問題点を提供してみたい。                                        

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