| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


シンポジウム S09-5

国としての再導入計画の位置づけ

西山理行(環境省・自然環境局・野生生物課)

わが国に生息・生育する既知の野生生物は9万種以上といわれています。野生生物の保全のためには“絶滅のおそれのある種”を常に的確に把握する必要があることから、野生動植物10分類群について「レッドリスト」を作成し、概ね5年ごとを目標に見直しを続けています。2006年12月(4分類群)と2007年8月(6分類群)に公表した最新のレッドリストでは、絶滅のおそれのある種(絶滅危惧1類及び同2類)として、3,155種の生物を掲載しています。レッドリストからの削除または絶滅のおそれがより低位のカテゴリーへの移行の実現や、新たな種のリスト掲載を防ぐことが求められています。

絶滅のおそれが特に高い種については、「種の保存法」に基づく「国内希少野生動植物種」として指定しています。2008年1月現在、73種(動物54種、植物19種)が指定され、そのうち38種(動物26種、植物12種)については関係省庁が「保護増殖事業計画」を策定し、繁殖の促進や生息地・生育地の整備などの事業を実施しています。

これらのうち、コウノトリ、トキ、ツシマヤマネコ、ヤンバルクイナなど、本来の生息域内における保全施策のみでは種を存続させることが難しいと考えられる16種について、「生息域外保全」の取組が始まっています。生息域外保全にあたっては、飼育・栽培下における保存・繁殖等のみをもってよしとするのではなく、可能な限り、「再導入」(過去に生息等していた地域に再び定着させるよう試みること)を目標とすべきと考えています。2007年度より、わが国の生息域外保全の取組に関する基本的な考え方を整理し、効果的かつ効率的な取組の推進と各事業の連携を確保することなどを目的とし、再導入を含む生息域外保全のあり方について検討を開始しているところです。

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