| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
シンポジウム S13-1
動物が交尾の際に見せるめくるめくような行動、交尾の際に使われる極端な形質など、交尾行動はそれ自体が人の興味を強く引きつける。それとともに、交尾行動は生態学にとっても刺激的な研究テーマを提供している。ハンディキャップ理論を軸にしてメスが交尾相手であるオスを選ぶことが研究の中心だった時期から、交尾行動の研究は新しい段階に入っている。
交尾の際にメスとオスの利害はしばしば対立し、その対立が交尾行動の進化の上で重要であるという性的対立(sexual conflict)の考え方は、交尾行動研究に浸透してきている。一見して対立と見えやすい典型的な状況だけでなく、対立に注目することによる新しい発見がなされており、対立の行方も次第に姿を見せつつある。また、交尾行動も生涯の1つの局面にすぎないから、その進化は他の局面の影響も受けるだろう。交尾行動と生活史全体などその他の局面との関係も理解が進んできている。意外な視点、見逃されている面に注意しながら、交尾行動を見直す”眼”について簡潔に述べる。