| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
シンポジウム S13-2
モズの雛への餌分配様式は雄親、雌親で異なる。雌親はどの雛に対しても餌乞いの強さに応じて給餌を増やすのに対し、雄親は体サイズの小さい雛が餌乞いを強めても給餌を増やさない。この現象は、どの雛に投資するかという点で雌雄間に対立が生じていることを示唆する。
この餌分配様式の違いを説明する3仮説は以下の通りである。1)一腹雛における父性の混在が雄親による給餌の偏りの要因である。つまり、一腹雛のうちで遅れて孵化した体重が軽い雛は父性が不確かであり、雄親はその雛への投資を減らす。2)雄親にとって、同性である雄雛が配偶相手や餌などの資源を巡る競争相手となる場合、局所的資源競争を緩和させるため雄親は一腹雛の資源配分を雌に偏らせる。雄親が体重の軽い雛の餌乞いを無視するのは、体重順位と雛の性との関係から将来の競争相手に対する投資を減らすためである。3)親の寿命に性差がある場合、繁殖機会にも性差が生じ、1回の繁殖に期待する雛の数や質が雄親と雌親で異なる。雄親は体重が軽く生残の見込みが低い雛に対しては投資しない。
このような観点から、沖縄県南大東島において2003-2007年2-9 月に調査を行い、生活史形質、給餌行動、および雛の性判定、父性判定により解析を行った。仮説1)体重の軽い雛に婚外仔が偏る傾向があり、雄が大きい雛を選ぶことで自らの父性が確からしい雛を選択できる可能性が示唆された。しかし、サンプルサイズが十分ではないので、さらに検討を要する。仮説2)性別による選択的な給餌に関する証拠を得ることはできなかった。仮説3)南大東島のモズの雄は雌よりも寿命が長いことがわかったが、偏った給餌行動と適応度の関係については未解明である。