| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
シンポジウム S13-4
グッピーは交尾を行い、体内受精する卵胎生魚類の1種である。本種は、雌による配偶者選択研究のモデル種の1つとしてこれまで精力的に研究が行われてきた。たとえば、本種の雌は体サイズの大きな雄や、オレンジ色のスポット(斑紋)が大きく派手な雄を配偶相手として選り好むことがよく知られている。このような雌の選択指標となる形質は、その雄の遺伝的質等を示しており、雌はそのような形質を持つ雄と配偶することで間接的(遺伝的)利益を得ていることが示唆されている。雌は好みの形質を示す雄の求愛を受け入れて、協力的に交尾を行う。一方、雌に拒絶された雄は、求愛行動を示さず、雌の背後から接近して強制的に交尾を試みる。このように、本種では交尾に至る前に、雌の配偶者選択があり、さらに雌雄が対立する場合もしばしば生じる。近年、このような交尾に至るまでの雌雄の行動ばかりでなく、雌雄が交尾してから雌が出産するまでの間に行われる繁殖戦略にも関心が高まっている。本種の配偶システムは雌雄ともに複数の個体と配偶する乱婚であることから、雌の体内では受精をめぐり、複数個体の雄の精子間で競争が起きる。また、雌はcryptic female choiceを行っており、配偶する雄の魅力に応じて受け取る精子量を調節したり、配偶相手の雄の魅力や数などにより子の数を調節していることが知られつつある。今回の発表では、グッピーにおける交尾に至るまでの雌雄の駆け引き、及び交尾後の受精や産子調節をめぐる雌雄の戦略などを概説する。そして、雌雄の対立やarms raceの視点からも、本種の交尾行動をめぐる繁殖戦略の適応性や進化などを論じてみたい。なお、本発表は、佐藤綾(東京学芸大学)との共同作業として行われる。