| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


シンポジウム S14-1

趣旨説明・・・Bambooの開花習性とクローン構造に関してのミニレビュー

蒔田明史(秋田県立大・生資)

タケササ類が特異的な開花習性をもつことは良く知られている。Janzen(1976)は,”Why bamboos wait so long to flower”という有名な論文において,タケササ類の開花に関するレビューを行い,捕食者飽食仮説を提唱した。日本でも,タケササの開花について古くから多くの報告がなされている。しかし,それらのほとんどは断片的な記載にすぎず,十分な生態学的な知見に基づいた開花習性に関する議論はされてこなかった。

タケササ類は地下茎の伸長を介した典型的なクローナル植物であり,開花習性の進化を考えるにあたっては,個体(=genet,またはクローン)を単位とした適応度や個体群内の遺伝的多様性の維持機構等を問題にする必要がある。そのためには,まずそれぞれの種のクローン構造(個々のgenetの拡がりやgenet同士の混じり具合など)を明らかにしなければならない。また,タケササ類は熱帯起源で温帯へ拡がったものと考えられているが(Clark 1997),熱帯性のものと温帯性のものとにみられる明白な形態的・生態的な特性の違いに着目した比較生態学的観点の議論も有効となろう。

近年の分子生態学的手法の発展は,タケササの生活史特性の解析にあたっても強力なツールを提供している。ただし,その一方で,クローン構造を理解するためには「掘る」という肉体労働が必須であることもまた間違いない。本シンポジウムでは様々な手法によって熱帯・温帯の双方で蓄積しつつある知見を提供してもらい,それに基づいた議論の出発点としたい。

私の発表では,熱帯と温帯のタケササ類の基本的特性を解説した上で,これまで行ってきたササの更新過程に関する長期研究で明らかになったことを簡単にレビューし,議論の端緒を開きたい。

日本生態学会