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シンポジウム S14-5
熱帯季節林内に同所的に存在する株立ち型のタケ4種、(Gigantchloa albociliata (GA), G. hasskariana (GH), Bambusa tulda (BT), Cephalostacyum pergracile (CP))の動態を11年間観測した。調査地は、タイ西北部カンチャナブリ県メクロン長期生態試験地である。
いずれの種も、最大稈高は12m程度、GHは斜面下部、GA、BT、CPは斜面中部から尾根部に分布していた。GHは一斉開花・枯死後4年目から観測、GAとCP の2種は観測期間中に一斉開花・枯死、BTは観測期間を通じて開花・枯死しなかった。9つの20mx20mのコドラートで、高さ1m以上の稈すべてをマークして、加入、生存、枯死を記録した。
一斉開花年の稈の死亡率は、GAで89%、CPで91%であった。CPは、その後の2年間ですべての個体が開花枯死したが、GAでは一部の個体が開花せず生存した。また、GAでは小さなサイズで待機していた個体が開花枯死せず、成長を始めた(その後、開花枯死する個体もあった)。CPは新たな実生個体群と完全に世代交代したが、GAは一部の生残した古いコホートが新たな実生個体群のコホートと共存する結果となった。
周辺のGA、CPの一斉開花・枯死による光環境の好転により、小さいサイズで待機していたBT個体の発生稈密度、サイズは急激に増加した。そのため、新たなコホートの補充がないにも関わらず、GA、CPが優占していた場所で、BTの優占度は急速に高まった。
一斉開花枯死という生活史が持つ適応的メリットの一つとして、次世代コホートによる同所的な更新の促進が挙げられる。しかし、熱帯性タケ類群集における異種(及び同種)の待機個体の存在は、この同所的な更新を阻害し、適応的なメリットを減少させると考えられる。
(共著者:Dokrak M.・齋藤智之・中静透)