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シンポジウム S14-6
共同発表者:池田邦彦(京大農)・陶山佳久(東北大院農)・齋藤智之(森林総研木曽)・長谷川尚史(京大農)・箕口秀夫(新潟大自然科学)・西脇亜也(宮崎大農)・蒔田明史(秋田県大)
タケ類は長時間の後に一斉開花して枯死し、実生で次世代が更新することが知られている。しかし、開花のタイミングが推定できないことから、群落が開花に至る過程はほとんど未知であった。今回、発表者はインド・ミゾラム地方に少なくとも過去三回にわたって48年に一回、周期的に開花の記録が残されているタケ、Melocanna bacciferaを見出した。その記録から次の開花結実が2004〜2007年、特に2006年末〜2007年に集中的に起こることが推定された。この推定に基づいて、2005年からミゾラム州内のサイランとマミットに調査地を設定し、追跡調査を開始した。本種は、ミゾラム州を含むインド北東諸州を中心にバングラデシュからミャンマーにかけて自生する種で、稈基が長く伸びることから、熱帯性株立型種が温帯性散稈型種へ進化する過程の解明にヒントを与える種としても注目される種であるが、今回はタケの開花特性を開花前から把握する世界初の機会を提供してくれる種となった。調査地一帯では予想通りの時期に開花が起こり、特徴的な実が結実した。広域調査の結果、分布中心域以外の地域では、東部では前年に、西部では翌年に一斉開花が起こったことが判明した。サイランの20×20mの調査地では、開花前には3万本/haの稈があったが、実生による回復が始まった昨秋には10万本/ha程度の密度の実生群落が成立している。開花の過程においては、小花の中に雄花的なものと雌花的なものが現れるという本種特有の開花特性に関する知見も得られた。また、開花前の全稈のクローンマップも作成していることから、クローンの数や分布に関する注目も含めて群落の変化を追跡中である。