| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T01-4

部分食物網と食物網:メタ群集の視点から食物網を考える 

土居秀幸(愛媛大・農)

生息地間ではメタ群集として生物群集がつながっている。近年では,生息地間または生態系間での物質のやりとりが生物群集の移動分散を通じて行われていることが明らかとなってきた。このことから,メタ群集が食物網の構造や動態を決定するのに重要であることが考えられる。生態学において,食物網に関する研究は古くから行われてきたが,その研究はある場所での食物網構造に着目するものが多く,メタ群集の概念のように,食物網が空間的にどのようにつながっているか,配置されているかについて言及した研究は少ない。食物網の概念では,ある生態系の食物網はsub web (部分食物網)が集まって形成されていると考えられている。数理モデルを用いた理論研究では,部分食物網の動態と食物網の関係など,部分食物網に関する様々な知見が得られている。しかし,野外での実証研究において,部分食物網について考慮した研究は極めて少ない。本発表では,空間構造・メタ群集を考慮した食物網の新たな視点について,いくつかの研究例を紹介する。また,今後の食物網研究に,どのようにメタ群集の視点を加えていくかについて,いくつかの問題点をあげて議論したい。

日本生態学会