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企画集会 T02-2
演者らは、ヒノキとミズナラの根の呼吸速度が日中低下する現象を発見し、生態学会新潟大会(2006年)と松山大会(2007年)で報告した。両種の根の呼吸速度は、光合成速度が上昇する明け方に急激に高くなり、光合成速度が低下する日中に低下するという傾向が春〜秋にかけて見られた。ヒノキとミズナラだけでなく、シラカバ、イヌツゲの稚樹でも根の呼吸速度の日中低下が観測されている(未発表データ)。これらのことから根の呼吸速度の日中低下は常緑・落葉に関わらず木本種で広範におこっている可能性が示唆される。さて、それでは根の呼吸速度の日中低下をもたらしている要因は何なのだろうか?
演者らは光合成の日中低下と何らかの関係があるのではと考え、2005年にヒノキとミズナラの林冠木を対象に個葉の光合成速度と根の呼吸速度を同時に測定した。さらに2007年には、両種の稚樹を用いて樹冠の光環境を制御しながら、根の呼吸速度と光合成速度を同時に測定し、光合成速度や蒸散速度、気孔コンダクタンス等のパラメーターと、根の呼吸速度の関係を調べた。その結果、根の呼吸速度は、光合成速度ではなく、蒸散速度に反応して増減していることが確認された。蒸散速度の低下がどのように根の呼吸速度の低下をもたらしているのか、その生理的機構に関してはまだ明らかになっていないが、演者らは現在、蒸散流による水や栄養塩の吸収・輸送に伴うエネルギー利用・生産と関係しているのではないかと考えている。