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企画集会 T03-2
高原の自然館と友の会「西中国山地自然史研究会(自然史研)」では,2002年から広島県北広島町霧ヶ谷地区のモニタリングを続けている.その内容は,カスミサンショウウオを中心とした両生類の産卵状況調査,灯火採集による昆虫の調査,バンディングと目視による鳥類相調査,そして夏と秋の植生調査である.一般の市民が参加して行われるこれらのモニタリングは,当初,霧ヶ谷湿原において湿原が減少したことを参加者に実感してもらい,湿原の減少に対する問題意識を広く啓発する目的で始められた.
霧ヶ谷湿原のある八幡地区は周囲を1,000m以上の山々に囲まれた海抜800mの高原の盆地で,気候は冷温帯にあたる.八幡盆地には大小様々な湿原が存在し,それらすべての湿原において最近50年の間に14%から79%の面積が失われた.霧ヶ谷湿原は1964年から1686年にかけて広島県によって大規模草地として開発され,コンクリート水路の設置による排水や表土の改変,牧草の播種などが行われたが,現在は牧場が閉鎖され,自然公園として利用されている.草地整備事業により湿原の多くは消失し,陸生の草本群落や,ノイバラ,カンボク,カラコギカエデが優占する低木林へと変化した.
自然史研の活動がきっかけとなり,広島県は2003年から霧ヶ谷において湿原を復元するための自然再生事業に着手した.現地での工事が始まる2007年夏までの間,広島県による事前モニタリングは自然史研のモニタリングを補完する形で実施され,施工中・施工後のモニタリングも同様に継続される予定である.本発表では,自然再生事業という,ある意味終わりの無い事業において,一般市民・研究者・行政・ボランティア団体など,多様な主体が関わる中で,博物館が果たしてきた役割やその成果について報告し,市民参加によるモニタリングの一例として今後の展望を紹介する.