| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T03-4

馬堀自然教育園における身近な自然の保全活動II ホタルの養殖実験から河川環境の再生とビオトープ作りへ

大場信義(横須賀市博)

横須賀市博物館付属馬堀自然教育園は3.3haあり、神奈川県立観音崎公園に隣接した丘陵地(N35°15’.27”, E139°43’01”)にある。開園時には地下水が豊富に湧いていたが、その後、次第に湧水減少が進んだ。そこで30年前にホタルをはじめとする水生生物の生息環境を再生するためのモデル実験が試みられた。しかし、その後、園周囲の宅地開発が進み湧水が枯渇し始め、井戸の掘削、水路の拡張改良工事と水中ポンプによる水循環システムの改良整備が行われた。その結果、これまでの様々な実践によって蓄積された知見を得ることができ、教育園は三浦半島の河川環境と水生生物、特にホタルの再生のモデル拠点として機能するに至った。こうした過程の中で対象地と動植物の自然特性のモニタリングも並行して実施された。この拡張時の水路の長さは約150m、幅30〜200cm、落差6m、水深3〜5cm前後とし、上流、中流、下流に池を配置し、増水時や渇水時に緩衝機能を持たせた。ホタルが生息するためには餌となるカワニナほかの水生巻貝の繁殖が必要条件となり、それを満たす目標として付着珪藻類もしくは落葉などの有機物を自然的に供給する環境整備を行った。日照が乏しい教育園の立地状況からみて、後者を中心とする環境条件の付加が適切と考え目標にすえた。この水路には一部園内の湧き水が加わり、毎分約10 lの流量とし、2〜3mおきに数cmの堰を設置し、急激な流下を緩和させた。この整備によりカワニナとホタルの繁殖は改善され、現在では安定的に完全に自生している。ホタルの再生に伴い、カワトンボほかの水生生物も自生するに至っている。

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