| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
企画集会 T04-1
DNAバーコーディングとは、DNAの特定配列を種のマーカーとして用いる技術で、動物ではミトコンドリアCOIが標準領域とされて。それに対し、植物では、標準領域のコンセンサスが得られていないが、葉緑体ゲノム上の複数領域を用いる予定である。本講演では植物におけるDNAバーコーディングの可能性を探るため、1)樹木同定での利用可能性、2)保全生物学的利用について議論を行う。
1)森林プロットなどにおける樹木同定での利用可能性について 熱帯における森林プロット調査では、多様な樹種が対象となりその同定には労力が必要である。われわれは植物同定作業をサポートするシステム-PISUMを開発してきた。PISUMでは、植物において1万件以上の情報がすでにあるrbcLの配列を用いた分子同定を行っていたが、情報が十分にあれば属レベルでまでは機能することが実証された。現在、PISUMはJBOLIのDNAバーコーディングシステムに移行中であり、複数の領域を併用する事により、種レベルでの同定精度をあげることが可能と思われる。
2)保全生物学とDNAバーコーディング:シャジクモ類を例に(坂山英俊 東大・院・総合文化) シャジクモ類は湖沼において透明度を維持する役割を担っており,その生態学的重要性が注目されている。我が国では1970年代以降の環境破壊の結果,多くの種類が湖沼から姿を消した。そのため,緊急にシャジクモ類を採集し,培養株として室内で保存し,自然界への復元のための材料を確保することが続けられ、さらに埋土卵胞子からの絶滅種の復元も行われている。一方,シャジクモ類の種同定には成熟した藻体(特に卵胞子)が必要であるため,外部形態のみによる種同定が困難な場合が多い。ここでは,最近のシャジクモ類の分類学的研究や生態学的研究から得られた知見を“DNAバーコードを用いた種同定”に焦点を絞って紹介する。