| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T05-1

繁殖干渉による種間競争の特徴

本間淳

本講演では、繁殖干渉(Reproductive Interference、以下RI)による種間競争とその特徴について簡単に解説する。

RIによる種間競争は、近縁種による(種間セクハラを含む)干渉(=RI)により増殖力の低下を意味する。地理的に隔離されていた近縁種が二次的に接触した際、一方の種のオスが他種メスに対して配偶行動をしてしまう場合がある。このオスの行動は、単なる「まちがい」ではなく、信号検出理論(signal detection theory)による適応的な説明が可能である。つまり、メス個体の形質の分布が近縁種間で重なる場合、オスが他種メスへの「まちがった」求愛を完全に避けるために「まぎらわしい」メス個体への求愛を避けると、同種メスへの求愛の機会を「まちがって」失ってしまうリスクも増大する。オスにとっての最適なふるまいは、この2種類の「まちがい」のトレード・オフにより決定されるのである。また、この他種オスからの求愛によるメスの適応度低下は、交雑に至らない種間セクハラによっても起こりうる。

干渉型競争としてのRIの特徴は、1) 資源競争のような密度依存型ではなく、相手種との遭遇頻度によって影響の大きさが決まる(頻度依存型)こと、2) 多数なほど有利、少数なほど不利になるため、一旦生じた優劣にポジティブフィードバックがかかる上、3) 実効性比に制限を受ける種内セクハラとは異なり、「加害種」と「被害種」の(個体数の)比に制限がないため、4)消費型競争に比べて非常に強力な効果を持ち、より極端な結果をもたらし得ることである。これは、Lotka-Volterraの競争方程式にRIの効果を組み込んだモデル(Kuno 1992)によっても、明らかにされている。

以上の内容を紹介する中で、内容が多岐にわたる、後の3講演とのつながりを挙げ、RIによる干渉型競争の強力さを実感して頂く、一助としたい。

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