| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T05-4

外来種問題に潜む繁殖干渉と干渉が無くならない理由

高倉耕一

この講演では2つの話題を提供する。一つは現在進行中のRI(繁殖干渉)としての外来種問題であり、もう一つはRIが遍在することの進化的理由である。

異所的空間分布や寄主特異性の分化などはRIのいわば“結果”としての現象であるが、もちろんRIは現在も進行中の現象である。そのもっとも顕著な例のひとつは外来生物による在来種の駆逐であろう。外来種の中にはその侵入後に近縁な在来種を置換してしまうものがある。例えばセイヨウタンポポと在来タンポポ、オオオナモミと在来オナモミなどがその代表である。演者らは野外でのデータ収集および室内実験などから、これらの置換の要因としてRIがきわめて重要であることを明らかにした。RIはこれまでの外来種問題の議論から抜け落ちていた視点であるが、外来種による置換を理解するためにもその影響を抑制するためにも、基礎的・応用的にきわめて重要な概念であることを議論したい。

もう一つの話題は、種間求愛・配偶という“間違い”に起因するRIが、上記のように植物界でも、本企画集会の他講演で紹介されるように動物界でも、普遍的に存在することの理由である。この問題を解く鍵は、本間による要旨でも述べられているように、“オスとしての最適な振る舞い”を考慮することである。これは、既存の理論研究(特に、種間での配偶について研究が蓄積されてきた繁殖隔離の強化に関する研究)で見逃されてきた点でもある。そこで演者らは、この“オスとしての最適な振る舞い”を考慮し、オスによる配偶者認識やオス間競争を組み込んだモデルを用いて、種間求愛・交尾の進化的動態を解析した。この解析の結果によって、種間求愛・交尾は必ずしも“間違い”ではなく、雌雄それぞれが適応的に振舞う結果であることが示された。これに基づき、RIの普遍性や進化的な安定性について議論する。

日本生態学会